11/11 舞台「ラブリーベイベー」@東京グローブ座

帰りの電車の中で、舞台の内容を何度も反芻しながら泣きそうになった。
そして、恋司が大好きな愛斗の名前を叫ぶ、その声がなかなか耳から離れなかった。

この舞台で描かれたのはいろんな恋愛のカタチ。そして恋愛で幸せになる人と傷つく人。
私自身は全くといっていいほど恋愛経験のない人間だけれど、それでもどの登場人物の気持ちも、分かるような気がした。
それは脚本・演出の人が、私と同い年っていうのが関係してるのかもしれない。なんかしっくりこないな〜っていう感じは一切なかったし。今の言葉で、テンポよく繰り広げられていく会話が、私にはちょうどよかった。

では、印象に残ったことをグダグダと。

  • 「ラブリーベイベー」というタイトル

舞台の中で恋司が書いている小説のタイトルは「ラブリーベイベー」。舞台そのもののタイトルと全く同じ。つまり、この舞台が恋司が書いた小説なんだと理解できる。舞台の冒頭でスクリーンに映されるオープニング映像を見たときは少し驚いたんだけど、舞台そのものが恋司の書いたものだとすれば、あの映像が差し込まれたこともしっくりくるなーと思う。
そうなると気になるのは、メインキャストの7人は、果たして想像上の人物なのか、それとも実際に生きている人物なのか、ということ。
私は舞台を見る前から、恋司と愛斗という主人公2人の名前にものすごい引っかかっていた。だって、2人合わせたら「恋愛」なんだよ、ベタすぎるだろうと。で、実際舞台を見てみたら、他の人物はみな割と普通の名前だし。恋司と愛斗は実在の人物ではないのだろうか、とも思ったけど、そこは自分の願望も含めて、実在していたということにしておこう!

  • 印象的な、恋司と愛斗の物語

愛斗の死というかたちで、突然終わりを迎えてしまった恋司の恋。だから自分が書く小説も上手く終わらせられない。っていうのは、愛斗が死んだ辺りで理解できた。ただ、上で書いたように、舞台そのものが恋司の小説だったのだという考えは1日経ってからようやく出てきた。それだけ、恋司が愛斗を想う気持ちに入り込んで共感していたということかなあ。
印象的だったのは、花火大会の日、熱を出した愛斗と看病のために残った恋司が2人で、しかも室内で線香花火をするシーン、後半にも同じシチュエーションがあって、そのときに恋司は「火薬の匂いをかぐと、筆が進む」って言っていたけど、3階席まであの線香花火の匂いは届いていたから、あの匂いを思い出して、じーんとした。
あと、愛斗が好きだと言っていたヒルクライムの「春夏秋冬」。愛斗が死んだ後、恋司はそんなに好きでもなかったその曲を携帯の着信音にしていた。でも、女性になって現れた愛斗が鼻歌で「春夏秋冬」を歌ったときには、「愛斗を思い出すから止めてくれ」と大泣きしながら懇願していた。好きな人が好きだった歌を手放せないでいるのに、なんかのタイミングでその歌を全身で拒否してしまう、恋司のなかの矛盾が垣間見れたのも印象的。
一番気に入っているのはラストシーンで、ようやく小説を書き上げた恋司が、愛斗が息を引き取ったベットにその原稿をそっと置くところ。恋司の恋愛が静かに死んでいく瞬間を見たと思う。ここは「終わった」のではなく「死んだ」の方がいい。だって、恋司はもう二度と愛斗と恋愛することはないのだから(恋司がこの先ずっと、愛斗を愛していたとしても、恋愛は恋司一人ではできないしね)。
そして最後の最後、恋司がタバコを吸おうとして一口でむせてしまうところ。ここで「小説の中の恋司」が「実際の恋司」に戻った、と私は解釈したのだが、これもすごいいいなーと思った。小説の中の、空想の自分は、本当は吸えないタバコもそんなに飲めないお酒も、愛斗のように嗜むことができる、ってなんかいじらしいじゃないですか。